プロの知識が身につく不動産売却コラム

毎営業日に更新している『お福分け』から、不動産売却関連を集めました

〖専任媒介・一般媒介どちらで依頼?〗 

 

専任は受任後7営業日以内レインズ登録・二週間に一度以上状況報告義務・自己発見買主と直契約可・依頼は一社。一般はレインズ登録義務なし(登録も可)・状況報告任意・自己発見買主と直契約可・複数業者に依頼可。

 

一般が良さそう。複数の会社が販売活動してくれるイメージ。でも仲介手数料は成功報酬。一般で他社成約だと、費用かけ広告していても仲介手数料は請求不可。専任は一社限定で依頼するため、成約すれば仲介手数料を売主へ請求できる(売主自己発見客直契約以外)。なので普通は、宅建業者は一般より専任物件の販売を頑張る。自社で買主を発見できた場合は手数料は倍、他社との共同仲介でも売主から仲介料受領できる。

 

私見では専任。レインズで物件周知と価格妥当性等見極めでき、結果的に短期間で売却に繋がる(少し技術必要)。ただし、囲い込みをしない(他社との共同仲介になっても売主利益第一で行動できる)会社で、担当者が忙し過ぎず相性が良い事が条件。

 

 

〖不動産相場はレインズ取引情報で調べましょう 一般の方もOK〗

 

レインズは不動産会社でなければ見ることできない不動産物件情報サイト。レインズでは販売中不動産物件以外にも、たくさんの情報を見ること可能。なかでも成約事例は不動産売却依頼を受けた時の査定の参考にしたり、購入希望の方には実際の取引相場から予算に合うエリアなどの絞り込みに使用できる大変便利な情報。実はこの成約情報は不動産会社でない方もある程度は見ることができる。REINS Market Infomation(レインズ マーケット インフォメーション)というサイトで「成約価格を基にした不動産取引情報提供サイト」とうたっている。売買専用で、マンションと戸建の実際の成約事例(個人情報に配慮し丁目まで)を誰でも閲覧可。

検索の仕方次第で土地にも対応可。相場を知りたいだけで不動産会社に聞くのは気が引ける、という方はぜひお試しを。

 

 

〖「相続した土地を売りませんか」って、なんで知ってるの?〗

 

「不動産屋さんから手紙がきます。ときには自宅まで訪ねて来て、相続された不動産を売りませんか?」って、なぜ知っているんですか?事情を聞くと、相続登記を最近したとのこと。その登記情報を不動産業者が見たということ。登記事項証明書に土地の面積、住所(この場合は地番)や地目などに加え、登記上の所有者の氏名・住所も記載されている。さらに相続登記をした日付も。これは誰でも申請できる。

 

不動産会社は、まだ市場に出ていないけどもう少ししたら販売されるかもしれない「売り出し間近」物件が大好き。自社で直接購入するも良し、建売業者や個人客に仲介しても良し。

認められているので、個人情報の漏洩だ!などと言っても仕方なし。売るつもりがあればですが、いくらくらいで売れるかなどの情報収集に活用するよう割り切って考えてみても良いかも。

 

 

〖一物五価?切り口で異なる土地価格〗

 

「いちぶつしか」(一物四価)や「いちぶつごか」と言う。不動産の価格のお話。下記で四価。実際に売買される実勢価格を加えて五価。

公示価格・・地価公示法。土地鑑定委員会が公示。1月1日の標準地(全国に約26,000地点) の「一般の土地取引の指標」などに使用する価格。

基準地価・・国土利用計画法施行令。都道府県が調査。7月1日の基準値(全国に約22,000地点)は上記標準地に重なっている地点もあり公示地価の補完的役割も果たす。

固定資産評価額・・各市町村が決定する固定資産税・都市計画税などの算定基準になる価格。公示価格の70%水準。

路線価・・相続税評価額とも。1月1日時点の相続税、贈与税の課税指標として国税庁により示される。公示価格の80%が目安。

 

不動産購入検討時の物件比較に役立つ。価格がついている数が圧倒的に多い「路線価」を参考にするのがおすすめ。

国税庁路線価図 https://www.rosenka.nta.go.jp/不動産業者間では「○○区の○○町のこの物件、販売当初は路線価の○.〇倍だって」なんていう会話も。これは査定の際の成約事例との比較の参考としての活用も。

 

 

〖相続土地の売却 税金は?〗

 

土地売却時の税金計算は①課税譲渡所得の計算②所得税と住民税の計算で算出。

①課税譲渡所得は「売却価額-(取得価額+譲渡費用)」。相続した土地は被相続人(亡くなった人)の取得価額を引き継ぐ。

②所得税・住民税は保有年数で異なる。長期保有のほうが税額的には有利。こちらも被相続人の取得日を引き継ぐ。

 

例)譲渡年月2023年12月、譲渡価格8,000万円、譲渡費用300万円、取得年月1978年3月、取得費4,000万円①課税譲渡取得 8,000万-(4,000万+300万)=3,700万円②所得税=3,700万円×15%=555万円 住民税=3,700万円×5%=185万円 税額=555万+185万=740万円

上記の手残り額=譲渡価額-(譲渡費用+税額)=8,000万-(300万+740万)=6,960万円

 

※復興特別所得税は考慮せず、相続人の所得控除なども考慮せず。

 

上記は一般的な計算式。条件や状況により各価額は大きく変化。税額については税理士へご相談を。

 

 

〖マイホームを売った時の3,000万円特別控除〗

 

個人がマイホーム(居住用不動産)を売却した際、譲渡所得がある時は分離課税として課税対象。譲渡所得がある場合とは(詳細な計算式は割愛します)、売った金額-買った時の金額がプラスになった時。

 

マイホームには様々な税金の軽減措置あり。有名なのは3,000万円の特別控除。これはマイホームを所有した期間にかかわらず、課税譲渡所得から3,000万円を控除して税金の計算をするもの。不動産は所有期間で課税率が異なるものが多い。所有5年以下の短期譲渡だと税率は所得税と住民税合わせて39.63%。でもマイホームにはそんなことしないよ、という制度。

 

3,000万円控除をしてもなお課税所得が残る場合も、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていれば、6,000万円以下の部分は14.21%(本則は20.315%)の軽減措置。

注意点は、3,000万円控除と住宅ローン控除は併用できないこと。この場合はどちらを利用したほうが有利かの試算が必要になる。

 

 

〖代金固定型売買と実測売買〗

 

数十年も前に登記された土地は、登記簿記載面積(公簿面積)と今の実測(実際に測量した)面積とは異なることがほとんど。ということを不動産業者は知っている。ところが実際に土地売買をする一般の方は、公簿と実測とが一致するものと思っている場合が多い。測量技術の進歩でより正確に測量できるようになったなど、公簿・実測面積が一致しない原因は様々。

 

売買時の土地面積の決定方法は2つ。ひとつは新たに実測をした面積を契約面積とするもの。もうひとつは代金固定(公簿売買)型。

実測売買で契約時に実測未了のときは、「測量した面積が契約上の面積(登記簿面積)と1㎡以上の差異があった場合は㎡当たり○○円にて清算する」といった特約を付ける。また、確定測量ができない場合は契約を解除するといった条項も良く見るようになった。安易に代金固定型売買をすると、実測し面積不足だった場合に売主は契約不適合責任を負うことあり。契約前にしっかりした確認を。

 

 

〖告知書の重要性〗

 

不動産売買契約時に売主から買主に告知書を交付。実務では、物件状況等報告書として。国土交通省「不動産の売主等による告知書の提出について 」では、告知書へ以下の記載をし紛争防止に役立てることが望ましいとしている。

① 土地関係:境界確定の状況、土壌汚染調査等の状況、土壌汚染等の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の過去及び現在の利用状況

② 建物関係:新築時の設計図書等、増改築及び修繕の履歴、石綿の使用の有無の調査の存否、耐震診断の有無、住宅性能評価等の状況、建物の傾き、腐食等の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況

③ その他 :従前の所有者から引き継いだ資料、新築・増改築等に関わった建設業者、不動産取得時に関わった不動産流通業者等 など

以上、一部分抜粋。

 

注意点は、告知書は売主の買主に対する告知義務を果たすための書類だと認識すること。売主の立場なら自身で記載する、買主の立場なら売主自ら記載したかどうかの確認を怠らないようにしたい。

 

 

〖求むチラシ(売却物件募集)が多いのは〗

 

不動産売買仲介会社の売上は売主・買主からの仲介手数料。仲介手数料は成功報酬。何十件案内が入っても、成約しなければ売上にならず。

 

昔は不動産会社に行かなければ、売却物件を知る術はなかった。だから、仲介手数料に占める多くの部分が物件紹介料という位置づけも可能だったのかも。今は誰でも、ネットで素早く新規売出しの不動産情報が手に入る。そのため、今は物件を購入するにあたっての情報整理・提供と、購入希望者の望んでいる条件とのマッチング度合いを精査し、住宅ローンの賢い組み方などのコンサルティングも行い、その報酬としての仲介手数料に変化したと感じる。

 

とは言え、物件情報は大事です。好条件の物件情報があれば、買主さんは自然と集まります。その物件を買うために現居を売るという連鎖が起こることもしばしばです。

だから、不動産会社は売却依頼(媒介契約)が欲しい。「売物件求めてます」のチラシが頻繁なのはそんな理由から。

 

 

〖敷地の一部売却は「敷地の二重使用(状態)」に注意しましょう〗

 

自宅などを建築した後に、その敷地の一部をお隣りさんから売ってほしいと依頼が。2世帯住宅を建築したいが敷地が狭く、要件を満たす建物を建てるために敷地を広くしたいとか。

敷地の一部を売却し、得た資金で住宅ローンの繰り上げ返済をしたら残債も減らせるし、合理的にみえる。

 

でも、この案を実行に移す前に確認しなければならないことが。それは、売却し残った敷地上の建物が建築違反状態にならないかどうか。容積率が80%の地域で延べ面積120㎡の建物であれば必要な敷地面積は150㎡。この150㎡のうち50㎡を売ってしまったら残りは100㎡。100㎡×80%=80㎡。100㎡の敷地に120㎡建っていたら容積率超過で違反建築物となってしまう。その後、お隣が取得した土地も含めて建築確認申請したら、敷地の二重使用。

 

実際には、売る土地を分筆する際に銀行に抵当権抹消の相談をした時点で発覚するはず。そのほかにも、敷地の一部譲渡は譲渡税の控除が使える場合とそうでない場合があり注意が必要。

 

 

〖契約不適合で売主が負担する責任〗

 

令和2(2020)年4月1日施行の改正民法で、重要な改正点の一つが、瑕疵(かし)担保責任から契約不適合責任へ転換されたこと。改正前は売買の目的物が通常有すべき品質や性能を欠くことを瑕疵(かし)と呼んで、隠れた瑕疵があった場合に売主が瑕疵担保責任として損害賠償や解除の責任を負うとされていた。改正後は売買の目的物を現況で引き渡すだけでは不完全で、売主は契約の内容に適合したものを引き渡す契約上の債務を負うという考え方を前提に制度が改められた。

 

目的物が「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」であるとき、買主は売主に対し①追完請求②代金減額請求③損害賠償請求④契約解除の権利ができるとされた。売主が担保責任を負わない旨の特約は民法上は有効だが、売主が知りながら買主に告げなかった事実については免責されない。売主としては、認識している建物の不具合について重要事項説明書や物件状況等報告書に明確に記載することが、後の紛争を予防するために重要。

 

 

〖土地売買契約前の地盤調査〗   

 

住宅建設のための土地売買契約時、なぜ事前に地盤調査はできないのですか?と聞かれることが。売主の承諾で地盤調査を行うことは可能も、一般的には売買契約前に地盤調査を行うことはない。軟弱地盤だった場合、地盤改良工事費用分を減額交渉に使われる可能性を、売主は排除したいのが主な理由。そのため、資金計画書には軟弱地盤に備え地盤改良・補強工事の予算取りをする。

 

土地売買契約書には、下記のような特約条項が入る。

『対象不動産土地に、建物を建築する際、建築を依頼する住宅メーカーから地盤・地耐力調査を要請されることがあり、その結果によっては地盤補強工事等が必要となる場合があります。地盤補強工事等については、建築する建物の構造・規模・重量および依頼する住宅メーカーにより異なります。また地盤補強工事等については費用が発生します。』実際には地盤調査をしないと確定はできないが、地盤の情報収集方法は様々あるので、土地購入エリアがどんな地盤なのかも忘れずに調べたい。

 

 

〖2022年の土地売買は約143万件〗

 

2022年1年間の土地売買件数は約143万件、取引面積は約1,566k㎡(2023年土地保有・動態調査(2022年取引分)国土交通省2024年3月27日)。取引件数の買主の構成比は、個人60.4%、法人34.8%、国・地方公共団体4.8%で、売主の構成比は個人61.8%、法人36.8%、国・地方公共団体1.4%。個人の土地取引で買主の最多年代は30~39歳、売主は60~69歳が最多。

 

目的別では、購入目的の上位から「自分(または親族)が住む建売住宅(の敷地)を購入」「自分(または親族)の住宅建設のための更地購入」「自分(または親族)が住むマンション(の敷地)を購入」と続き、売却目的では多い順に「管理できなくなったため売却」「買主または仲介者から希望されたため売却」「日常の生活費に充てるため売却」。

 

個人の取引で売却の件数は約143万件のうち61.8%なので約88万件ですが、「買主または仲介者から希望されて」が約16万件と約5件に1件ある。「売り物件募集中」のチラシや手紙が良くポストに入るのも納得。

 

 

〖建物状況調査に関する法改正〗 

 

既存住宅売却時、媒介契約書に建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんの有無を記載。法改正が行われ、2024年4月1日から宅建業者が建物状況調査をあっせんしない場合は、その理由を記載する事に。

 

建物状況調査とは、既存住宅状況調査技術者研修を修了した建築士が実施するもので、調査対象部位は建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の流入を防止する部分。

売主からすると、調査費用がかかる(買主が費用負担の場合もあり)のと、調査により建物の不具合が発見されることにより建物価格が下がってしまう懸念などから、消極的になることも。

 

しかし、調査住宅の取引は取引後のトラブル発生を抑制につながる。買主は、調査結果を参考にリフォームやメンテナンスを行え、さらに一定の条件を満たせば既存住宅売買瑕疵保険に加入可能なこともメリット。

 

 

〖消費者契約法と宅地建物取引業法との関係 〗

 

消費者契約法は、情報の質、量、交渉力で事業者よりも劣る消費者の利益を保護するために定めらた。不動産取引にも適用。消費者保護の手段として、消費者と事業者との間の契約において、事業者の一定の行為によって消費者が誤認したり、困惑したりした場合にその契約を取り消すことができるなどとしている。

 

消費者と事業者との間で締結される契約は、不動産業者が売主となり、マンション・一戸建住宅・宅地を法人でない個人の一般顧客に分譲する契約や、賃貸マンション・アパート・貸家の経営者が個人である賃借人と締結する賃貸借契約など。契約が取消しになる例は、①不実告知による取消し②断定的判断の提供による取消し③不利益事実の不告知による取消しなど。

 

民法と商法以外の法律と消費者契約法が適用される場合には、消費者契約法以外の法律が優先(消費者契約法第11条第2項)。宅建建物取引業法と消費者契約法が競合する場合、原則として、宅地建物取引業法が優先して適用される。